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××× 095 : 二秒 ×××


 海軍基地内、2番ドック。
「キリがねぇ…」
 見事なハイキックを決めたサンジはぼやいた。
 “騒ぎを起こして注意を引き、船をドックから出さないこと”
 それが今回、サンジに与えられた役目。
 隣の1番ドックはゾロが担当。残りのメンバーはメリー号で移動中。
 メリー号の行く手を阻ませないための作戦なので、海兵たちを全滅させる必要はない。
 が、ここから船を出させたら終わり。メリー号は、あっという間に見付かってしまうだろう。
 船が出なけりゃ良いのなら。
 滑るような動きは止めず、サンジは考えた。
 手っ取り早く、壊しちまおうか。
 マストの1本でも折ってしまえば、航行する気など起きなくなるだろう。
 ついでに船体にヒビでも入れられれば言うことはない。
 そうするか。
 目標を定めたサンジは、目の前の軍艦へ進路を変える。
「邪魔だ!」
 しかし湯水のように涌いてくる海兵が、行く手を阻む。
 勿論、下っ端海兵ごときに倒されるサンジではない。
 次々と彼らをなぎ倒していくのだが、倒れた彼らの体がサンジの足取りを邪魔するのだ。
「鬱陶しい!」
 悔し紛れに、数人まとめて蹴り上げた。
 彼らは頭上の連絡通路へ吹っ飛んで、小さなうめき声を上げた。
「…タフなヤツら」
 まだ意識があったのか。
 サンジは思わず感心した。
 勿論、攻撃の手は緩めない。
 けれど状況が変わるわけでもない。
「くっそ…!」
 船体まではまだ距離がある。
 どうやって距離を縮めるか。
 周囲を見回したサンジは、連絡通路の上に見慣れた輝きを見つけて眉をひそめた。
「何やってんだ、あの野郎」
 抜かれた刀が反射する光。
 その持ち主は、口元だけで笑った。
 それは合図。
 カウント、1。
 サンジは深く身を沈めてから、跳んだ。
「…一刀流…」
 風に乗って届く声。
 それとすれ違うように、サンジの体は連絡通路を目指す。
 カウント2。
「“三十六煩悩鳳”!」
 着地と同時に、背後で大きな破壊音。
 振り返ると、軍艦のメインマストが折れていた。
「…っぶねぇ技使うな」
 初めて見る技の威力に、サンジは瞠目した。
 ゾロは眉ひとつ動かさずに、
「ビビったか?」
 と言い放ち、2本目の刀を抜いた。
 サンジは薄苦笑いを浮かべて、言った。
「バカ言うな」
「おら、来いよ」
 そんなサンジの表情を見もせずに、ゾロは通路の入り口に向かって挑発の言葉を投げる。
 サンジは煙草に火を付けて、背中合わせに立った。そして反対側の入り口に向かって言った。
「そっちから来ても良いんだぜ?」
 両の入り口でたじろぐ海兵たちに、背後の気配は楽しげに笑った。
 それを感じてサンジも笑う。
 見なくても分かる。何をしようとしているか、なんて。
「二刀流“鷹波”!」
 背後で通路が落ちる音。巻き込まれた海兵たちの悲鳴。
 不適な笑みを浮かべたコックは、先頭の海兵の頭上を飛び越えた。
「ほら、道を開けないと巻き添え食うぜ?」
 列中程の海兵の頭を鷲掴みにして、腕一本で体を支え、長い足を振り上げた。
「“パーティーテーブルキックコース”!!」 
 あっという間に通路が片づく。
 背後では崩壊音。同時に駆けてくるゾロの足音。
 通路が落ちきるよりも早く、ふたり同時に入り口へ辿り着いた。
「…っとに、おれだけでヤるつもりだったのに余計な真似しやがって」
 吸いきった煙草を捨てながら、サンジはぼやいた。
「大体1番ドックはどうしたよ? もう済んだとは言わせねぇぜ」
「邪魔はしてねぇ。おれはおれの役目をしに来ただけだ」
 刀をしまって、ゾロはきっぱりと言った。
 これは、ひょっとして。
 苦虫を噛み潰したような顔をして、サンジは呻いた。
「ここは2番ドックだ。おめぇは隣の1番」
「何言ってんだ。ここが1番ドックだろ」
 信じられねぇ。
 サンジは天を仰いだ。
「この迷子剣士が」
「んだと?」
「大体、なんだってそう壊滅的に方向感覚がねぇんだ」
「そんなこたぁねぇ。ちゃんと地図通りに来た」
「地図通りでこんなとこ着くかアホ! 時間もかかりすぎだ大体何処行ってたんだ!」
「んだとテメェ…!」
 ゾロの手がサンジの胸ぐらに、伸びた時。
 ふたりの間を銃声が走った。
「ばっかもん! 誰が発砲を許可した!」
「申し訳ありません!」
 ふたりそろって首を巡らせると、数メートル先で銃を構える海兵たちが6人ほど。
 指揮官らしいひとりが後方に立ち、残りは並んで銃撃の体勢を取っていた。
 つまらなそうに、サンジはポケットから煙草を取り出した。
「…許可、出した方がいいんじゃねぇの?」
 そんなサンジを横目に、ゾロは口元を歪めて言った。
「後悔すんなよ?」
 そしてふたりの目線が交わった、2秒後には。



 -end.


 相変わらずエロないなぁ。あははははは。
 2カウントで2秒です(分かるか)。
 ケンカするほどチームワーク抜群なふたりにラヴなのです。
 オチが卑怯だなと我ながら。
  (2005.6.15)


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