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02
ひんやりとした空気の中で、ロビンはため息をついた。
疲れているわけではない。あきれているわけでもない。
食堂の様子を見ていたら、自然に口からもれたのだ。
どうしてだか自分でも分からない。
今までたくさんの人たちと過ごした。
けれど、自分の誕生日を祝おうなんて人間はいなかった。
「いい船ね…」
と、つぶやいてみる。それは本当に思うこと。
それなのに、どうして船内を見張るような真似をしてしまうのか。
これほど裏表のない一味には一度も出会ったことがなかったのに。
能力を駆使して乗船時から見てきたけれど、ずっと同じだなんて。
ソファにもたれて、目を閉じる。
でも、他の目を閉じることは出来ない。
この部屋は、何の音もしない。
けれど、他の部屋でする音を聞き逃すことは出来ない。
それは、何故?
この能力を身に付けてから、ずっとそうして生きてきたからだろうか。
能力のせいか、自分自身のせいか。
ロビンは軽く身震いして、食堂の様子に耳を澄ました。
楽しげな話し声。自分の誕生日を祝福しようという人たちの声。
嬉しいと思う。けれど。
この手には、ハサミがついているのに。
ロビンは思い出す。
それは古い神話。
希望の糸を切ってしまうハサミを持っている女神がいるという。
そのハサミが自分の手についている。
そう感じずにはいられない。
それでも、彼らは祝ってくれるのだろうか。
『何言ってるんだ?』
きっと、船長は言う。そして、
『祝うのが当たり前だ』
と続けるだろう。
他の乗組員たちも同じ。
自分はそれを知っている。
けれど同じように、必ず、彼らを裏切る自分も知っている。
ロビンの口から、再びため息が洩れた。
それは仕方のないことだ。
だって、自分はそうやって。
今まで。
『…じゃ、それで行こう!』
彼らの話し合いは終わったようだ。
もうすぐ日が暮れる。
食堂へ行こう。
温かいたくさんのものが集まる、あの場所へ。
ロビンは本を閉じて立ち上がった。
-end.