※ “062:フワフワ”の続きにあたりますが、読まずとも平気。
・ ・ ・ 。
誰かが、呼んでいる。
・ ・ ・ 。
浅い眠りの中、意識の隅でサンジは思う。
・ ・ ・ 。
規則正しいリズムの音で。
・ ・ ・ …… ・ ・ ・ 。
誰かが自分を、呼んでいる。
・ ・ ・ …。
サンジの意識は眠りの海から、ゆっくりと浮上した。
・ ・ ・ …
薄く開いた目に映ったのは、指先。
・ ・ ・ 、 ・ ・ ・ 。
規則正しく、三回。
テーブルの上を、指の腹で叩いている。
どうしてこんな音で自分を呼ぶのだろう…?
「起きたか」
止んだリズムの代わりに聞こえた、無愛想な声。
「ゾっ…?」
鼻に触れるほどの距離に、緑色の髪。
反射的に身を起こす。
食堂のベンチに腰掛けてふたり、眠ってしまっていたらしい。
しかも、ふたりで一枚の毛布を分け合って。
「もう夜が明けるぞ」
ゾロは立ち上がって伸びをした。
落ちかけた毛布を引き上げながら、サンジはつぶやいた。
「なんで、お前が」
「覚えてねぇのか」
ゾロは不満そうに唇を曲げる。
「昨夜、うたた寝をしていたお前に毛布をかけたら、そのまま手ぇ掴んで離さなかったんだ」
「…え」
胸ポケットに伸ばした手を止めて、サンジは記憶を手繰る。
昨夜。
眠気に勝てず、テーブルに突っ伏した…ところまでは覚えている。
そして、その後は?
困惑するサンジを余所に、ゾロはゆっくり伸びをして平静な声で告げた。
「ダメだ。寝る」
「は?」
「眠い」
それだけいうと、重力に任せたようにベンチに腰を落とし、テーブルに突っ伏した。
声をかける間もなく、聞こえ始めたいびき。
「なんなんだまったく」
息を吐きながら、サンジは、あらためて胸ポケットからタバコを取り出し口に咥えた。
それから、テーブルの隅に置いたマッチに手を伸ばす。
少し、遠い。
横着をして、立ち上がらずに体を伸ばす。
と、置いたままのペンが肘に当たって転がった。
「…ん……」
いびきが止んだ。
「あ」
起こしたか?
サンジは振り返って様子を窺う。
けれど、再び変わらぬいびきが聞こえ始めた。
「…これくらいで起きるわけねぇか」
安堵の息をついて、ペンを机の隅に置く。
「……んん…」
けれど再び、いびきが止んだ。
「……?」
サンジはタバコを咥えたまま、ゾロの顔を覗き込んだ。
眉間にシワを寄せてはいるが、起きそうにない。
しばらく待つと、再びいびきが始まった。
「………あ」
ひょっとして。
サンジはテーブルの上を、指で
… ・ ・ … 。
そっと、叩いた。
「……んん」
予想通り、いびきが止んでうめき声が聞こえ。
サンジはタバコを咥えたまま、笑みを浮かべた。
今朝のサンジと同じように、ゾロは耳をテーブルにつけるようにして眠っているのだ。
だから、叩いた音が耳を打つ。
・ ・ …。
規則正しく、二回。
「……んだ…」
サンジの刻んだリズムにゾロは呻く。
けれどやはり、眠りからは覚めない。
… ・ ・ …。
「…んんん…」
眉間にシワを寄せて。けれどちっとも、目覚めない。
・ ・ …
「んー…」
もぞり、と体を動かす。けれどやっぱり目覚めない。
サンジはくつくつと笑いながら、テーブルをそっと叩き続けた。
-end.